多焦点眼内レンズへの関心
もう一つ、今回の学会で主に聴講したのは多焦点眼内レンズに関するセッションです。
私自身も61歳になり、最近は老眼による仕事効率の低下を感じています。慶應大学の根岸教授の発表によると、老眼の経済的損失は約20%程度というデータが示されました。詳細な統計解析の方法は覚えていませんが、このデータは私にとって非常に興味深いものでした。
老眼の悩みと多焦点レンズの利点
60歳以上の患者さんの見えにくさという訴えに関して、私自身が若い頃は「老眼鏡をかければ大丈夫ですね」と簡単に言っていました。ところが実際に自分がその年齢になると、仕事のスピードに影響が出ることを痛感しています。
特に眼科の診療においては細かい作業も多く、老眼は大きな障害となります。そこで、多焦点眼内レンズが重要な選択肢となります。私もそろそろ手術を受ける側の年齢となり、どの多焦点レンズが自分に最適なのか、を選ぶことに大変関心を持っています。
学会での新たな発見
日頃から患者さんに最適な多焦点眼内レンズを選んでいるため、各レンズの特徴は把握していますが、新しいレンズが登場するたびに新たな学びがあります。今回も、新しい多焦点レンズについての情報を得ることができ、再び選択肢に迷うこととなりました。
しかし、これは良いことです。新しい技術や製品が登場することで、患者さんに提供できる選択肢が増え、より良い治療が可能になるからです。
ただ光学的な特徴はなかなか患者さんには伝わりません。新たなレンズに関して、詳細な知識を得ること、そしてうまく噛み砕いてお伝えすることの重要性をあらためて痛感しました。
患者さんへの思い
白内障手術はもともとの目の中の濁ったレンズを入れ替える手術です。それにより強度近視で分厚いメガネをかけている人はその近視から解放され、生活の質がグッと上がります。
入れる眼内レンズの中には一部分だけが見える単焦点レンズ、いろんな距離が見える多焦点レンズがあります。手術の際には必ず眼内レンズを選ぶわけですが、眼内レンズを選ぶ理由は人によって違います。
それぞれの患者さんが持つ価値観や人生に寄り添い、今回の選択が手術後の一生涯にわたって影響することを念頭に置きながら、私たちは全力でサポートしていきたいと考えています。