ご受診の皆様、日々お待たせいたしておりまして申し訳ございません。先日のコラムでお話いたしました繁忙期はあともう少し続く予定です。😢
さて、待ち時間問題でやはり多くいただきますのは“予約制にならないのか”とのお声です。
予約であれば大まかな時間の予定もたてやすく、便利ですよね。待ち時間問題はいつも課題であり、日々解決策や待ち時間緩和の良い方法がないか、私たちにとっても悩みの種です。
とは言え予約制を導入できないのには様々な理由があるんです…。
今回は待ち時間問題を通して眼科のこと、当院のことを知っていただけましたら幸いです。
~どうして眼科は予約制が少ないのか~
近年、いろいろな医療機関さんが予約制を導入しておられますよね。でも、眼科で完全予約制を導入されていたり、きっかり時間通り進んでいるところはまだまだ少ないかと思います。先日他の眼科施設のスタッフさん達と交流の機会がありまして、やはりどの施設さんも待ち時間問題や、予約制導入について悩まれているようでした。それは眼科ならではの問題があるのです…。
まず、一つ目は眼科の病気の特性上の問題があります。
嗅覚、聴覚、味覚、視覚、触覚…。人間が目から得る情報は全体の80%を占めると言われています。つまり視覚を失うというのは生きる上でそれだけ深刻なダメージを受けることになるのです。そんな大事な役割を担う目ですが、目の病気は数日・数年単位ではなく、数分単位で一気に進行するものも多いんです。
例えば網膜剥離や、緑内障の発作などが起こった場合、症状が発生してからすぐに治療を行わなければ失明につながるものもあります。対処が遅れてしまうと、人生の80%に大きな損害が出てしまい、取り戻せなくなってしまうこともあるんです。ぶどう膜炎も早急に治療を始めたい疾患の一つです。“ただの充血だし、結膜炎かな?かすむ気もするけど、今日は予約いっぱいみたいだし、今度でいいかな?”と、患者さんのご受診が先送りになってしまうケースも多く、予約制の壁によって、より対処が遅れてしまいます。
予約制にしてしまうと、そういった患者さんのご受診が遠のいてしまったり、迅速な対応が出来なくなってしまうリスクがあるんです。
そして二つ目は診察上の特性です。
みなさんが病院にかかったとき、いつもどんな流れで進んでいくか、思い出してみてください。おそらく多くの科が、まずは診察から案内されるかと思います。診察をして、それから必要があれば検査になるかと思います。検査がないこともあるかもしれませんね。
ですが、眼科は基本的には検査から始まります。
眼科診察において検査はとても重要で、その種類も他の科に比べてとても多いんです。
症状によっては診察が先でも差し支えないこともありますが、基本的には症状に応じて考えられる可能性から必要な検査を行い、その検査データをもとに医師が診察で所見と結果を照らし合わせていく。それがとても大事なんです。
定期的な経過観察においても、あらかじめ次回の検査内容は医師から指示をされていますが、別の自覚症状が発生した場合はその症状に応じて検査内容を変更していかなくてはいけません。
正直、眼科もまずは診察からとして、その時間を予約を取っていく事もできます。そうすれば形式上は予約制になりますね。ですが、結局は検査が必要であり、症状に応じて必要な検査内容も所要時間も異なりますため、最終的にかかる所要時間は明確に予測できないことから、予約をいただいたからと言って、それは来院時間が指定されているだけで、要した時間はさほど減ることはないかと思います。
他の科では当日は予定通りの検査だけにして、他の症状がある場合はそれについては後日にするという方法も取られていますが、それを眼科で行ってしまうと先に挙げたような緊急性のある疾患の対処が遅れる可能性が出てきてしまいます。ご自分がそうなってしまったら、嫌ですよね…。医療機関側としても悔やみきれません。
そういった事情が、眼科が予約制になりにくい背景にあります。
~当院ならではの理由~
この記事を書いている私は、実は何軒かの医療機関・眼科を経て、こんの眼科に参りました。
こんの眼科に来て一番驚いたことは、検査の仕方、予約の取り方でした。
まず、お子さんの検査ですが、視能訓練士が常駐していることもあり、お子さんそれそれにあった声かけや検査をしています。混んでいるからと言って淡々とこなすのではなく、内気なお子さんにはゆっくりと丁寧に、ちょっとやんちゃなお子さんにもまるで検査がゲームであるかのように、お子さんがが答えやすいように検査をしているスタッフを多く見ます。
大人の方には検査の必要性や流れを説明しつつ行っているのもよく見かけます。
また、予約の取り方も一人一人を見て、配慮をしながらとっています。
足の悪い方はせかしてしまうことの無いように、お耳の遠い方はしっかり説明(場合によっては筆談も)出来るように、症状の重い方は検査しながら漏れなく聞き取りも行えるように、検査時間を長めに予約が取られています。それ以外にも、例えばコンタクトの処方であっても、お悩み別に時間を取っていたり、初めてなのか、現在使っているのか、久々の使用なのかによっても説明の内容が変わってきますので、お話をうかがいながら必要な時間を調整しています。細やかな気配りだな、と入職した当初はとても驚きました。
決まり切っている検査内容なのであれば、予約システムを導入し、患者さんがいつでも自分で好きに予約を取ったり変更できるようにしてしまえば良いように思えます。受付スタッフも業務負担が減るので、正直とても魅力的なお話なのですが、そうしてしまうことによって、お一人お一人に合わせた検査ではなく、どんな患者さんも全員同じように検査をしなければなりません。それが良いことなのか、私にはとても難しい問題に思えます。
お待たせしてしまうからこそ、それにお返しできるようお一人お一人に向き合う。これが、こんの眼科が予約制を導入できない理由かと思います。
勿論、丁寧にやっているから仕方ない、待たせて当然、ということはありません。お待たせしてしまうことには日々、申し訳ない気持ちや悩みが尽きません。
どうしたら待ち時間が減らせるか、待ち時間を有効活用する方法はないか、待つストレスを緩和する方法はないか、日々考えては挑んでいます。
皆様から頂く待ち時間に対するお言葉も、参考にさせていただいたり、重要なお言葉ととらえておりますが、今回はそんな私たちの葛藤と理由も、少しお届けできればと思いました。
いつも当院にお越しいただき、また、温かいお声をかけていただきありがとうございます。
今後とも当院をよろしくお願いいたします。