加齢黄斑変性

DISEASE / TREATMENT

加齢黄斑変性とは
(かれいおうはんへんせい)

加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)(AMD : Age-related macular degeneration)は、黄斑(おうはん)という網膜の中心部がダメージを受けることで、視力が低下する病気です。高齢者に多く、欧米では中途失明原因の第一位ですが近年は日本でも増加しています。


こんな症状はありませんか?

  • ものがゆがんで見える
  • 視野の中心が暗く見える
  • 視野が欠けている
  • 視力が低下した

初期には自覚症状がないこともありますが、進行すると中心がぼやけたり、ゆがんで見えたり、最悪の場合には中心が見えなくなることがあります。

  • 正常な眼

  • 滲出型加齢黄斑変性

加齢黄斑変性の2つのタイプ

  滲出型
「新生血管型」
「ウェットタイプ」
萎縮型
「非滲出型」
「ドライタイプ」
眼の中の変化
  • 網膜色素上皮の細胞内に溜まった老廃物を吸収しようとして、脈絡膜から血管が伸びてくる(脈絡膜新生血管)
  • 脈絡膜新生血管は浮腫んだり、破れて出血したり、血液中の成分が漏れ出たりしやすいので、その水分が組織内に溜まって、網膜を押し上げる
  • 視力低下の進行が速く、重篤化しやすい
  • 網膜の細胞が加齢により変性し、老廃物が溜まって栄養不足に陥り、その結果網膜色素上皮が萎縮すると視力が低下する
  • 脈絡膜新生血管は発生しない
  • 進行すると、地図状萎縮と呼ばれる状態に移行することがある
患者さんの割合
  • 50歳以上の1.2%が発症
  • 50歳以上の0.1%が発症
病気が進む速さ
  • 速い
  • ゆっくり
病気の経過
  • 治療せずにいると、視力の低下、見え方の異常(ゆがみ、中心暗点、コントラスト低下など)が急速に進む。失明することもある
  • 視野の中心部の視力が少しずつ低下する
  • 時間の経過とともに新生血管が発生し、滲出型になることもあるので、定期的な検査が必要

加齢黄斑変性(AMD)の治療

ここでは、加齢黄斑変性(AMD)の治療方法について説明します。

萎縮型の場合

現在のところ、確立された治療法はありません。研究段階の治療法としては、薬物療法や再生医療などが挙げられます。

滲出型の場合

抗VEGF療法が主な治療法です。抗VEGF抗体を眼内に注射することで、新生血管の活動を抑え、視力低下の進行を遅らせることができます。
薬剤は非常に高価で、1回の薬品代が約16万円です。抗VEGF療法は健康保険で加療でき、高額療養費制度を利用することで負担を軽減できます。薬の効果が切れると再発するため、2−3か月ごとに注射が必要になります。



下記では、日本人が発症しやすく、治療法もある滲出型について説明します。

1.光線力学的療法(PDT)

2004年に「光線力学的療法(PDT)」が可能になり、治療の主流になっていきました。これは

(1)光に反応する薬剤を腕の静脈から注射

(2)病変部に特殊なレーザーを照射

という2段階で構成される治療法です。
この治療により、正常な組織に大きな障害を与えることなく、新生血管を閉じることが可能です。
ただこれらの治療は視力の改善が期待できないことから、一定の視力を下回るような、症状が進行した方のみが受ける治療でした。

2.抗血管新生薬療法

2009年頃からレーザーを照射しなくても視力の低下を抑え、時に改善も期待できる治療である「抗血管新生薬療法」が可能になりました。

体の中には脈絡膜新生血管の成長を活性化させるVEGF(Vascular endotherial growth factor:血管内皮増殖因子)という物質があります。抗血管新生薬療法は、このVEGFの働きを抑える薬剤を眼内に注射することにより、新生血管の増殖や成長を抑制する治療法です。

この治療法は、一旦低下した視力の改善が期待でき、かつ視力の良いうちからでも治療が開始可能な、画期的な治療法として、現在の主流となっています。

こんの眼科では、抗血管新生薬療法を行っています。光干渉断層計(OCT)(※)で経過観察をしながら1か月に一度の注射をして行く方法です。まだ軽い症状の方にはサプリメントをお勧めしています。

検査と黄斑像

※光干渉断層計(OCT)

網膜断層検査(もうまくだんそうけんさ)の一方法で、蛍光眼底造影と違い、造影剤を使うことなく、網膜の断面の状態を詳しく調べることができます。滲出型加齢黄斑変性では、網膜剥離(網膜が浮き上がっているところ)や網膜のむくみ、脈絡膜新生血管などを、この断層像で観察できます。

正常な眼の黄斑像

滲出型加齢黄斑変性の黄斑像

監修:京都大学大学院医学研究科眼科学 教授 吉村長久

ただ、残念ながらこれまでに必ず治る、という治療法は確立されていません。

加齢黄斑変性症のリスクを高める生活習慣と予防策

喫煙、肥満、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、AMDのリスクを高めることが知られています。特に喫煙は最大の危険因子であり、禁煙がAMDの予防には不可欠です。
また、紫外線もAMDのリスクを高めるため、外出時にはUVカットのサングラスを使用し、目を保護することが推奨されます。


目の健康を守る栄養素と食事

AMDの予防には、食生活が重要な役割を果たします。特に、抗酸化作用のある栄養素が黄斑を保護すると考えられています。


ルテイン・ゼアキサンチン

黄斑色素の成分であり、抗酸化作用によって黄斑を保護する働きがあります。ほうれん草、ケール、ブロッコリー、トウモロコシ、卵黄などに多く含まれます。
ただし、これらの食品から十分な量のルテインを摂取しようとすると、現実には難しい場合があります。例えば、ルテインの推奨摂取量とされる1日6mgをほうれん草で摂取しようとすると、大皿いっぱいの量を食べる必要があると言われています。
そのため、サプリメントでルテインを摂取することはとても有効な手段です。サプリメントを選ぶ際は、含有量や品質を確認し、信頼できるものを選ぶようにしましょう。


ビタミンC・ビタミンE

抗酸化作用によって活性酸素から網膜を保護する働きがあります。レモン、オレンジ、ピーマン、アーモンドなどに多く含まれます。


亜鉛

抗酸化酵素の元となり、網膜を保護する働きがあります。牡蠣、牛肉、大豆などに多く含まれます。


オメガ3脂肪酸(網膜の健康維持)

青魚(サバ、イワシ、サンマ)、くるみ、亜麻仁油

最後に

加齢黄斑変性症は早期発見・早期治療が重要な疾患です。片目をふさいだ時の視力低下や歪みなどの症状が現れた場合、早めに眼科を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。

関連リンク(参天製薬)

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